1983年 マイツール構想
スタート
館山の海の見える2階でホワイトボードに図を書いて、
データがどうのパラメータがどうのと色々説明してくれたのを、
当時の販売本部長がウンウンとうなずきながら聞いていました。
もっとも帰りの館山の駅で本部長が 「言ってる事の半分も解らなかってけど、どうなんだ。」 と私に聞いたので、「コンピュータを皆に使わせようというコンセプトだから、
SIMPLE(当時リコーが発売していたソフトで、はじめは私が社内向けに開発していたもの )と同じです。
良いんじゃないですか。」 と答えたら、「よしやろう。」 という事になったのです。
コンセプト固めと諸事情
マイツールの開発が社内でスタートして、長谷川、荒川を含め社内の数人のメンバーで、コンセプト固めの議論を社内事情なども考慮しながら進めていくなかで、TOOLBOXによるプログラミングよりマイツールはコマンド重視の方向にしようと、どんどん傾いて行ったのです。
これはリコー社内のオフコンの事情も強く影響しています。
オフコンがプログラム作成でお金が思うように取れず、赤字がどんどん増えている状況で、プログラムというのは人ばかり必要になって少しも儲からない、と社内上層部が拒絶反応を示していたからです。
コンピュータを使いやすくするのには単機能が一番、そのためにTOOLBOXで特定業種、業務に特化したソフトを作りユーザーに提供するという提案も最初はありました。
けれどもオフコンパッケージソフトのユーザーからの変更要望の多様さに振り回されていた社内を説得するために、マイツールはコマンドだけで、ユーザーが自分でコンピュータを使えるのだ、という方向にしていったのです。
コマンドよりメニュー方式の方がユーザーが簡単にコンピュータを使えるじゃないか、という反対意見も多々ありましたけれどね。
三位一体のマイツール
マイツールは仕事の道具、事務機、パーソナル。
コンピュータはシステム。オペレーションする人、プログラムする人、アウトプットを利用する人がすべて別々。マイツールは一緒。
仕事を一番分かっている人が自分の欲しいものを出すために、自分でコンピュータを使う。これがマイツールの特徴。
仕事を知らないプログラマがソフト作るので問題になる、マイツールは仕事の当事者が自分で作るのだから問題にならない。
そのためにOAプラザで使い方を教える。というのがオフコンとどう違うかを説明する決まり文句でした。
でも、マイツールを売ろうとしてプログラムの経験のあるセールスは、ユーザーにコマンドの使い方を教えるより自分でオートを組んで納入した方が効率よいというので、そういう売り方に走ったところもあります。
案の定、あとからユーザーから変更してくれとか頼まれて、そのセールスが既に居なくて内容が分からず苦労した、というようなところも一杯あります。
今でも昔リコーでオートを作って納入したユーザーの2000年対応は大丈夫だろうか、などと困ってますからね。
というような訳で、マイツールはプログラム作成に利用される言語としてというより、コマンドで画面を見ながら次の処理を選択していくやり方を中心にしていくようになったのです。
アセンブラ、FORTRAN,COBOL,BASIC等、会社に入って各種のプログラムを飽きるほど組んできた私には、この方向の方があってましたね。プログラム組むのなんて面度臭くてやだな〜といつも思ってましたから。
発売後の要望
マイツールを発売して要望の多かったのが、PIPSに比べ変数が少ないというものでした。
プログラムを組まなくてもいいのだから変数なんて今のままで充分、増やす必要ない、と言ってたんですが、PIPSからマイツールに移った人達の声はそれが多かったですね。
マイツールのユーザーに最初になった人達は、なんだかんだ言ってもPIPSユーザーの方が多かったですから、ユーザーの声を尊重して結局変数は後から増やした筈です。
開発
私は、なるべくユーザーがプログラムなしで処理が出来るよう、条件式の代わりにCNCを、ループ文の代わりにPAGE命令を、考えたわけです。
考えたと言うけど、全部自分がやったわけでなくこういう処理をしたい、と開発担当者に言って、後はその担当者が具体的にコマンドを作ったのですね。
担当者が少し作って 「こんなのでどうですか」 といってデモするのを見て、もっとこうしたほうが良いとか言って修正させる。
このようにして当時は開発が進んで行きました。
開発者は、計算関係は誰、印刷関係は誰とか、大体機能毎に別れていて各人が担当コマンドを結構自分で改善していました。
だから昔は、製品の中にマニュアルに書かれてないコマンドや機能が含まれていたりしています。
これが「隠しコマンド」などと言って、後で問題になったりしましたけどね。
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