戦略・サプライ

開発が少ない人員でそれなりに進んで行く一方、同時進行でマイツールの販売戦略作成も青山近辺の会議室をいろいろ借りて行われて行きました。

リコーだけに、出来る事

長谷川さんがリコーに提案した時、言っていた事は、

「パソコンは今一部のマニアにしか使われていない。これではいけない。
こんな便利な道具を皆に、又我々の次の世代にまで使ってもらうようにしなくてはいけない。マニアだけが使えるような状況ではダメだ。
パソコンを使うにはサプライも必要だ。ところが館山で印刷しようとして紙がなくなったとすると秋葉原まで行かなくてはならない。こんな状況では安心して使えない。 館山にはNECの営業所も無い。
リコーなら館山にもあるし、全国各地に販売店がある。おまけにコピー用紙100枚でも届けてくれる。
こういうメーカーがパソコンやらなくては世の中に広まらない。
リコーだけに、これが出来る。」

というような事で、これに販売本部長が動かされたわけです。
実際は、松下とシャープにも同じ提案をしていたんですけど・・・。

長谷川さんは話し方がうまく、人をその気にさせる力を持っていましたね。

この考えを基本にして、リコーの現状を踏まえ戦略を作ろうとしたわけで、長谷川さんも荒川さんも当時は、リコーの状況をもっとよく教えて欲しいといつも言ってました。 橋本さんもリコーに入ってきたばかりなので、会議では私がもっぱらリコーの現状はこうだとか説明しました。

南青山会館(PUCをよくここでやったよ、懐かしいな、などと言ってました)などの会議室はよく使いましたね。 五反田の郵便貯金会館で泊りで戦略会議したのも思い出します。 私は家が近いから夜帰ろうと思ってたのに雪が降ってきて帰れなくなり、結局、皆と飲んだり泊まったりしてね。 長谷川さんは体もでかかったし、飲む量は凄かったですよ。 荒川さんも橋本さんもあまり飲む方じゃなかったので、もっぱら私が飲むのにいつも付き合っていました。 自由が丘のスナックのマスターをしてた時の話なども、よく聞きましたね。

コンピュータ素人が素人に売る

我々がマイツールの販売戦略として結論付けた事を、いくつかのキーワードであらわすと、
・ マイツールはコンピュータ(オフコン)ではない。事務機である。

・ システムでなくパーソナルである。個人の能力を高める分野である。
ここに必要なものは販売、物流、メンテナンス、教育、サプライである。
これらトータルソフトで、今までのコンピュータ・メーカーと違ったやり方で、パーソナル分野を狙う。
負ける分野は捨てる。SEレスで行く。

・ コンピュータ素人(複写機セールス)が素人(コンピュータが使えない)に売る。

というようなところです。
これらキーワードに従って実際どうしていくか検討して、具体的な販促策を作っていったわけです。

販売戦略を考えたり、マイツールを開発している間にも、社内のオフコン部隊からは、なぜマイツールなんてものを開発するのだ、うちでもマルチプランMSエクセルの前身をベースにマイシートという言語を開発している。それとの違いは何なのだ。などと随分質問を受けました。

マイツールは工夫次第

そういう時、マイツールとはどういうものか色々説明しなくてはならなかったのですが、開発者がどう思っていたか紹介しましょう。

「マイツールは、どの程度まで使いこなせるか、ユーザーのセンスにまかせる考え方である。従って自由度が相当大きい。複雑なこと、例外的なことなどもユーザーの工夫しだいで可能になる。
固定している業務のコンピュータ化よりも、流動的な業務(システム要件が変わりやすい )のコンピュータ化に、より効果を発揮する。
従って中小企業の経営者あるいは自営業者が経営のためにシミュレーションをやるといった使い方で効果がある。
使用方法が固定的でなくフレキシビリティに富んでいるのである。」

これは最初に開発に参加した技術者が、マイツールを1ヶ月ほどプログラミングした感想です。 本質をよく捉えていたと思います。

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