Mバージョンの構造
シェル分離
ユーザーからは分からないのですが、開発サイドからいえばMバージョンはそれまでと内部構造をまるっきり一新したソフトです。
Vバージョンは、今までバージョンアップの度ごとに付け足し付け足しでやってきた為、ソフトそのものが肥大になり変更も難しくなっていました。
そこでこの機会に内部を一新し、今後の変更にも耐えられるようなものにしようと、マイツールの核の部分(シェル)とコマンド部分をプログラム上はっきり分けて、構造的にすっきりさせたのです。
このようにすれば、毎年新機種発売に合わせてバージョンアップする時や他社機への移植なども、全部書き換える必要がなく開発作業の効率が良くなるからです。
画面表示を変更するというのはプログラム的にけっこう大変で、おまけに画面を考えてもらっていたデザイナーがプログラム的に不可能な絵を描いてきたり、センスもあまり良くなかったりして半分も使えず、せっかくマイツールが他社に先駆け、画面表示にデザイナーを使ってかっこ良くしようとした意図も、思ったようには行かなかったですね。
もっともそのような事に経験があるデザイナーなんてどこにもいなかったですから、仕方なかったですけど。
マウス主体
それとMバージョンではマウス主体にしようというので、プルダウンメニューについては結構苦労しました。
スクロールどうするかも揉めましたね。
マウスを使ったソフトはスクロールバーを使うというのが一般的だったけど、いちいちそこまでカーソルを動かすのが面倒だし、表示されるページがそれによって小さくなるのも気に食わなくて、私は反対だったのです。
そこで右ボタンを使うというようにしたわけです。
右ボタンを押した時カーソルを手の形にして、ページを手で動かすイメージにしようとしたのです。
手でページを動かすのなら、手を上に持っていけばページの下の方が見えて来ないとおかしいじゃないか、とか色々あったのだけど、下を見たい時は下に動かすのが自然じゃないかというので、今のようなスクロール方向になりました。
最近はWindowsソフトでもスクロールバーを使わず、マウスのボタンでスクロール出来るようになってますよね。
昔はマウスにボタンなどついていなかったですけど。
マイツールのほうが先行して使いやすさを探求していた、と言えるでしょう。
ハードも標準はマウス装備にして、タブレットはオプションとしたのもこの時からでした。
長谷川さんも、これからはマウス標準だと主張したのですけどね。
日立もタブレットは作りたくないと事あるごとに言ってたのですけど、止めるわけにはいかない、専用I/Fはなくてもいい、オプションでいいから使えるようにしろと
要求したのです。
その後桑名のハートウェアでしたっけ、皆さんの要望でタブレットを標準に戻すと言ったのですよね。
あれも実際は価格表の標準装備にタブレットを入れただけで、ハード的にはタブレットの専用I/Fはもうなくなっていたのです。
ソフトの構造の大幅変更といっても、データ互換、オートプログラム互換は絶対であるというのが条件でしたので、プログラム的には結構大変だったのです。
すっきりするためにはこうしたい、というような要望がプログラマなどから結構出たのだけど、互換性と言う事から断念したことも多くあるのです。
長音変換
この時、例の長音の問題とかも検討項目にあがったのも事実です。データページ読んだ時、英数字に囲まれたものはハイフン、前後にかなや漢字があったら長音に自動的に変えちゃおうかなどという案を出したりもしたんですけどね。
以前作ったデータの検索でヒットしなくなると大問題になる、というのでそのままになったのだけど、まだユーザーの少ないあの時にちゃんとしておいたほうが良かったのかもしれませんね。
表示色の検討
ページの表示色もMacのように白にしようか、というのもこの時検討されたんです。
文字色、背景色がそれまでと変わってしまうという互換性の問題から、これも今までどうりで行こうとなったのです。
時間切れ
そんなわけで開発作業は非常に時間がかかりました。
新しい3.5インチFDが最初安定せず、読み取りエラーを良く起こしたりしてハードの問題だ、ソフトだなどと分析に手間取ったりした事もあります。
例によってハードのほうが先に出来上がるものだし、そうなるとすぐ発売したいというので、ほんとうのMバージョンは間に合わないため、V3をM1として発売したのです。
そして少し後から、構造的には全く今までのマイツールと違ったM2を出したわけです。
M1を出していたのは短期間だったから、知ってる人は少ないでしょうね。
言い訳するようだけど、当時営業のほうからは新しいソフトを早く早くと急っつかれて、大変だったのです。
私などMrマイツール発売と同時に新ソフトが出ないのは開発部隊の責任だとか、責められていたのです。
新ハードが出来たと同時に新ソフトを出すなんて、実際は無理ですよね。
製品版のハードでソフトの最終テストしたいのに、その期間が取れないという事なんだから。
こういった事情もあって、今問題になっているいくつかの項目も検討の時間切れで、今までと同じで行こうと見切り発車した部分も多々あるのです。
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