インナーセールス

先ずは内部に売り込む

マイツールはコンピュータというより、事務機としてリコーの複写セールスに売ってもらうという方向で販売戦略を立てたわけですが、複写セールスを動かすためには、各地の販社にその気になってもらわなくてはならないというので、まずインナーセールスをスタートさせました。

私もその時までインナー・セールスなどという言葉は聞いた事なかったのですが、まず内部に売り込もうという事です。
インナーという意味では、社内でマイツールを使わせようという動きも後から行ったのですが、これは小田島さんが色々やってくれました。

そこで販社の社長を全員集めてマイツールの内覧会を行ったのです。 この時まだマイツールソフトは完成していませんでした。
社長の前で長谷川さんが、「マイツールが如何にリコーにとって必要であるか、これをやる事によってすばらしい未来が開ける」 というような事を皆に宣伝したわけです。 偉大なるアジテーターである長谷川さんの話で、販社の社長もマイツールをやらなくては、というような気になっていったのです。

完成前の内覧会

パソコンを10数台ならべ社長を何人かずつその前に座ってもらい、マイツールのデモも行いました。 この時も説明は長谷川さんがやり、オペレーションは我々がしました。
ソフトがまだ完成してないので、デモ・シナリオを荒川さんと作ったのだけれど苦労しましたね。 計算部分が完成してないので計算前のページと計算結果のページをあらかじめ作っておき、コマンド入力したら結果のページを読み出して表示する、なんてことをしてごまかたりしましてね。
「計算なのにフロッピーカチャカチャ読んでるようだけど、どうして?」、なんて聞いてきた人もいましたけど(販社側の人でなかったから、後で本当の事を教えました )、長谷川さんの迫力ある話で内覧会は成功に終わりました。

特許・著作権

マイツールを発売するにあたり、SORD社PIPSを売ってる会社から何か言われるのではないかというのは、常に内部で問題になっていました。 リコーのルートで既に、PIPSを扱っているところがマイツールにしたいと言ってきたらどうするか、というような話が出たりしました。 向こうが言ってくる場合はしょうがないけど、こちらからPIPSを扱っているところにマイツールを積極的に売り込みするのはやめよう、ということを決めたりしました。

ソフトそのものについて著作権の侵害だと言われないか、という話も出ました。 私がリコーの顧問弁護士のところで色々説明したりしました。
マイツールが問題になるなら、マルチプランMSエクセルの前身は 対 ビジカルクMACのソフトでとっくに問題になってるはずだと私は言ってたのですが、専門家の弁護士に意見を聞いておいた方が良いということになったからです。
結論としては、PIPSのソースプログラムの一部なりとも使っているわけでなく、それを見ながら真似して作ったわけでもないので、法的に全然問題ないというのが弁護士の意見でした。

ずっと後になってSORDが東芝に吸収(?)された後で、PIPSが特許になったという話が出た時も、社内で問題になったりしました。 法務部から、「もしもに備え、資料を集めておいた方が良い」 と言われたりしてね。 東芝とは相互に特許使っても良いという話になっているが、ソフトは範囲に入ってないなんて言われましてね。
この時も長谷川さんと色々話して、絶対大丈夫だという資料貰ったりしたのだけど、その内容は長谷川さんが亡くなった今では、明らかにされることはないでしょう。 「俺は、そのようになった場合の事も考えていたんだから」、なんて長谷川さんは言ってたけどね。

特許といえば、マイツールの¥、@のキーでデータを複写する機能が富士通の特許になってる、なんて言われた事もあります。 無効にするための資料集めたりするの結構大変でした。 まあ結局は問題になってないので解決してるんだけど、こういった事があったおかげで、読みにくい法律や特許公報なども色々読ませられ、勉強になりました。

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